肉料理と合う日本酒とは
肉に合う日本酒は、あるのか?
刺身や焼き魚など「魚料理と日本酒」は当たり前の姿に思える、そして「肉料理と日本酒」は、難しいでしょう、相性の良さは感じ得ない、でもこれって思い込みだと思うのです。
前にも書いたのですが、どんなお酒でも必ず、肉料理と合うお酒があるはずです。日本酒は、ワインと同じ醸造酒、そして発泡性の物もありますし、甘いの辛いの、濃いものスッキリしたもの、香りが華やかなもの、乳製品のような香りのものなど非常に多岐に?渡るのです。
その上、濃くて甘い・淡麗で辛いといった具合に、組み合わせを考えればこんなに幅・奥行きの広いお酒はないでしょう(日本人として贔屓しています笑)。
中でも、香りについてはすごいものがあるのですよ。おっと、日本酒のことを語りだすとまた長くなりそうなので、いかに日本酒の香りが素晴らしいかを少しだけ述べます。
日本酒の香りの奥深さにびっくり
日本酒の原料は米・米麹・水、これだけなのに、なぜかフルーツやハーブ、乳製品やお花など様々な香りがするのです。そしてこの香りの原因・もととなるのが、原料香・熟成香・酵母香・乳酸菌香の4つに大きく分けることができるのです。
1.原料由来香
いわゆる「日本酒らしい香り」といわれるものですが、米・米麹などの原料からきている核となるべき香りです。純米酒や精米歩合の高いものに強く感じられ、吟醸酒や大吟醸酒のように精米歩合の引くものには弱い傾向になります。また、本醸造酒や普通種などの醸造用アルコールを添加するお酒も、やはり弱くなります。
代表的な香りは、甘みを思わせるもの(わらび餅や水飴など、ふくよか・豊かな印象を与えます)、苦味・渋みを思わせるもの(カブや大根など清涼・清々しい印象を与えます)、うま味を思わせるもの(炊いたお米やお餅など芳醇・まろやか・深みのある印象を与えます)
2.熟成香
時間の経過とともに発生する香りを熟成香といいます。これはクセが強くなれていない人からすると好みがかなり分かれるものです。時間の経過とともにあらわれる香りで新酒のときにはなかったものが出てきます、例えば、果実がドライフルーツであったり元々の香りが複雑化したり、スパイスや茶葉などなかったものが現れたりしますが、これは日本酒の中のアミノ酸や有機酸が影響しているとか。
代表的な香りは、甘みを思わせるもの(黒糖・カステラ・はちみつなど、複雑・濃厚な印象を与えます)、酸味を思わせるもの(ドライレーズン・ドライイチジクなど力強く・濃厚な印象を与えます)、苦味・渋みを思わせるもの(ゴマ・松の実・ナッツ類・ひのきなど深みのある・香ばしい印象を与えます)、うま味を思わせるもの(味噌・醤油・干ししいたけなどふくよか・複雑な印象を与えます)
3.酵母香
いわゆる吟醸香、吟醸酒や大吟醸酒などにある特有の香りですが、この香りを生み出すのが酵母なのです。吟醸香の成分は、カプロン酸エチル(完熟のリンゴやバナナのような濃く甘い香り)と酢酸イソアミル(若いリンゴやバナナのような軽い香り)となっています。米・米麹などからこのような果実のような香りを生み出す、近代酒造りのすごい開発ですね。
代表的な香りは、甘みを思わせるもの(メロン・バナナ・マンゴー、またユリ・ラベンダーバラなどの華やかな印象を与えます)、酸味を思わせるもの(レモン・ライム・ユズ・スダチなど爽やか・清涼な印象を与えます)、苦味・渋みを思わせるもの(ミント・レモングラス・タイムなど爽やか・青々しい印象を与えます)
4.乳酸菌香
生?仕込み、山廃仕込みなど生?系酒母から造られた日本酒から乳酸菌由来の様々な香りです。香りは、乳製品類から感じられるものとなります。速醸系酒母が軽やか・淡麗辛口な酒質に仕上げるのに対し生?系酒母は深みのある酒質に仕上げるため、時代の変化で求められる味わいに対応し造られています。
代表的な香りは、甘みを思わせるもの(生クリーム・カスタードクリームなどのふくよか・まろやか・なめらかな印象を与えます)、酸味を思わせるもの(ヨーグルト・フロマージュブランなどのミルキーな印象を与えます)、うま味を思わせるもの(バターなどのふくよか・コクのある・まろやかな印象を与えます。ここのうま味はアミノ酸系ではなくコクのある乳製品のイメージです)
以上、すごいですね。日本酒の味は、「利き分ける」といいますが、昔は甘口・辛口・濃醇・淡麗とこれくらいの言葉で表されていました。しかし今は、多種多様な日本酒が生まれ香りも複雑でその味わいをより的確に表すのに6つの事項でチェクされることが多いようです。それは、1.アタック(口に含んだ瞬間の印象)、2.テクスチャー(食感、飲み口)、3.ボディー(味わい、特にうま味に注目)、4.味わい(甘み・酸味・うま味・アルコール感)、5.含み香(口に含んだときに感じられる香り
、6.余韻(最後に残る味わい、特にうま味とアルコール感)この辺のことは、また機会があれば詳しく述べさせていただきますね。
肉料理と日本酒の具体的な相性は?
自分で述べておきながらですが、あまりにも多岐になりますから、具体的な項目を独断と偏見の羅列で今回はご勘弁ください。
1.牛肉に合う日本酒
純米酒が良いと思います。赤身と脂身のバランスが良いロースは、すっきりした甘みのある淡麗の純米酒、ヒレやシャトーブリアンなどの赤身を楽しむなら、ステーキと米の香りがよく合う純米吟醸酒がおすすめです。
2.豚肉に合う日本酒
熟成古酒なんかいかがでしょう。とろりとした甘みのあるお酒で、味の濃い料理にも負けないので、豚肉の甘みとよく合います。脂身の多い豚肉を食べた後に口の中をすっきりさせたいなら、淡麗の日本酒を選ぶのも良いでしょう。
3.鶏肉に合う日本酒
生酒なんかいかがでしょう。さっぱりとした鶏肉には、白ワインのように楽しめる生酒、特に山廃仕込みの生酒は、深い旨味や力強さを感じられるので、鶏肉の淡泊な味をよく引き立たてもくれます。
4.すき焼きに合う日本酒
やはり純米酒が良いとおもいます。特に濃厚で甘辛い味つけにあう芳醇な旨味があり、すき焼きの濃い味付けをしっかりと包み込み、後口のキレの良いお酒が良いでしょう・
5.ローストビーフに合う日本酒
山廃仕込みの純米酒なんかいかがでしょう。山廃仕込みの酸味がローストビーフのうま味に相加相乗的に作用したりします。
6.ビーフステーキに合う日本酒
山廃仕込みの純米吟醸酒はいかがでしょう。山廃由来の強めの酸味と原酒ならではの高めのアルコール度が柔らかい旨味を強調させながら、脂もスッキリさせ、お肉の持つコクとお酒がバランスよく感じられます。
7.焼肉に合う日本酒
生のにごり酒はいかがでしょう。程よい酸味とガス感は後口をさっぱりしてくれるので、お肉がさらに美味しくなるでしょう。マッコリに負けず劣らずです、濃い目のにごり成分とスッキリ辛口の味わいが脂分にも爽快に感じられます。
8.豚しゃぶに合う日本酒
吟醸酒でうま味の強いタイプが良いのではないでしょうか。吟醸香控えめながらぬる燗なんかで旨味を感じながらさっぱりしたお鍋にも相性が良いでしょう。
9.鶏唐揚に合う日本酒
純米大吟醸酒はいかがでしょうか。ある意味高級酒になりますが、ポイントは芳醇でフルーティーというところです。唐揚げのジューシーな旨味と相性もよく油分もスッキリしてくれるはずです。ハイボールだけが唐揚げに良いわけではありません、微発泡な純米吟醸酒なら最高でしょうね。
以上、今日はここまでにしておきます。