精肉店の人件費削減がうまくいかない理由|現場で起きていること

精肉店の人件費削減がうまくいかない理由
ビジネス

人件費を見直したい

精肉店を経営していると、
一度はそう考えたことがあると思います。

売上が伸びないとき。
原価が上がったとき。
利益が思うように残らないとき。

まず最初に見直されるのが、
人件費です。

数字として大きく、
削減の効果が見えやすいからです。

では、
人件費を下げれば、
本当に経営は楽になるのでしょうか。

以前、ある店舗で
人件費の見直しを行ったことがありました。

売上は横ばい。
原価は上昇。
利益が残らない。

帳票を見ると、
人件費率が少し高い。

そこで、
夕方の時間帯を1人削ることになりました。

それまでは
夕方は3人体制でした。

スライサー1人
手切り・加工1人
品出し・接客1人

この形です。

これを
2人体制に変更しました。

スライサー担当は固定。
もう1人がすべてを兼務。

数字としては、
これで人件費率は改善します。

机上では、問題ありませんでした

最初に変わったのは、
16時台でした。

学校帰りの客足が増え始め、
小量多品種が動く時間帯です。

豚こま200g
鶏もも1枚
合挽300g

細かい注文が重なります。

以前は、
手切り担当がすぐ対応し、
もう1人が売場を整えていました。

しかし2人体制では、
注文対応だけで手が埋まります。

その間、
売場は動きません。

売れた穴が、
そのまま残ります。

豚バラが減る。
補充できない。

鶏むねが減る。
まだ出せない。

特売の山が崩れる。
直す人がいない。

小さな乱れが、
積み重なっていきます。

17時になると、
さらに忙しくなります。

仕事帰りのお客様が増え、
まとめ買いが始まります。

「これもください」
「あとこれも」

注文が続きます。

以前なら、
1人が接客、
1人が加工、
もう1人が売場。

流れができていました。

しかし、
2人体制では回りません。

加工が終わるまで、
次の接客が待ちます。

接客している間、
売場は止まります。

スタッフの動きも変わりました。

以前は、
一歩引いて売場を見る時間がありました。

平台の乱れを直す。
売れ筋を前に出す。
減った商品を補充する。

誰に言われるでもなく、
自然に行われていました。

しかし、
その動きが消えました。

目の前の作業だけで、
精一杯になります。

「あとで出そう」
「あとで直そう」

そう思っても、
その「あと」が来ません。

気づいたときには、
18時を過ぎています。

売場の変化は、
さらに出てきます。

補充のタイミングが遅れる。
結果として、欠品が増える。

欠品すると、
関連商品も動きません。

豚バラがない
→ 野菜炒め用が売れない

鶏ももがない
→ 唐揚げ用が売れない

売上は、
静かに落ちていきます。

さらに、
声かけも減りました。

以前は、
「今日はこれ安いですよ」
「この部位柔らかいですよ」

そんな会話がありました。

しかし、
忙しくなると消えます。

加工して
包んで
渡す

その繰り返しになります。

売上は、
すぐには落ちません。

しかし、
単価が下がります。

まとめ買いが減り、
追加購入が減る。

気づきにくい変化です。

人件費は下がりました。

しかし、
売場の余白もなくなりました。

人件費は、単なるコストではありません

売場を支える力でもあります。

削ることで数字は整います。

しかし同時に、
売場の余裕が消えます。

売場の余裕が消えると、
売上を作る動きが止まります。

もし今、
人件費の数字は整っているのに、
売場に違和感があるとしたら。

それは、
人の問題ではなく、
余白の問題かもしれません。

あのとき、
数字は正しい方向を示していました。
ただ、現場は違うサインを出していたのかもしれません。

人件費は、
削るものではなく、
配分を考えるもの。

そう考えると、
見え方が変わってきます。

人件費だけでなく、
価格や商品構成を見直したときにも、
同じようなことが起きることがあります。

経営判断について、
迷う場面があれば、
壁打ちという形で整理することもできます。

数字だけでは見えない部分を、
現場の視点で整理する。

そんな時間も、
役に立つことがあると思います。

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